西郷南洲翁遺訓(3)
幾歴辛酸志始堅,
丈夫玉碎恥甎全。
一家遺事人知否,
不爲兒孫買美田。
「幾度か辛酸を歴て、志始めて堅し。丈夫、玉砕。甎全を恥ず。
一家の遺事、人知るや否や。児孫の為に美田を買わず」
何度も何度も辛い目に遭って挫折を味わって、人の志・信念とは、はじめて堅くなるものだ。
挫折を味わっていない信念など、当てにならないのだ。
信念を持った本当の男とは、輝きを放つ玉となれるなら、そのまま砕けても本望である。
何の輝きもない瓦となって、ただ朽ちるまで生き永らえるような人生は、むしろ恥とする。
私には、我が家に残しておくつもりの遺訓がある。
それを、皆さんは知ってくれているであろうか。
それは、子孫のために美田を買わず。
つまり、自分の血のつながった子孫だけに財産を残すような真似はしない、ということである。
『西郷南洲翁遺訓』
西郷隆盛
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